ふと思い出すことがある。
そのふと思い出す内容がなんとも不思議である。
もちろん何かと関連付けて思い出すのは理解できるが、何も関連しないまま思い出す時がある。
この記憶は脳にどのようにしまわれていて、どのように引き出されるのだろうか。
断片的な記憶。
ある日、カニの服を思い出した。
断片的に急に思い出す。
そのカニの服は弟のものだ。
まだ保育園にもいっていない弟が着ている。
色は赤と黄色の2着。
今でこそキャミソールという言葉があるが、その頃はなかった。
キャミソール型をしたカニの服。
その頃の言葉で言えば、ランニングシャツの肩のところが細い紐になっている服。
カニが全面に大きくプリントされており、クリクリの目が印象的。
急にこの服が脳裏に浮かんだ。
その記憶から、弟の小さい頃、親の若い頃、姉のサラサラな髪も思い出す。
そして、数えるほどしか行けなかった祖母宅の記憶が引き出される。
大きかった祖母宅。
長い長い坂を登ると、牛がたくさんいて、小さな畑がある。
そこに古くて、深い色の家。
その頃の自分の顔は思い出せない。
写真で昔を想像することはできる。
一つの記憶から、芋づる式に記憶がつながっていく。
普段は思い出せないような道。
母が着ていたワンピース。
自分が気に入っていた、お嬢様が履くような靴。
懐かしい記憶が次々と。
この断片的な記憶がでてくると嬉しくなる。
きっと脳の奥深くに刻まれており、たまに極たまに顔を出してくれる。
その記憶は確実に自分が経験したことだろう。
もう思い出したくても思い出せないほど古い記憶。
大切に大切にしまっておこう。
これも私を作る一部。
私が生きてきた一部だ。
話は夢の話になるが、もう見なくなった夢がある。
その夢は空を飛ぶ夢だ。
雲のような白いものに乗り、空を飛んでいる。
そして、落ちそうになって目がさめてしまう。
もう一度、寝てしまうと、もうその夢は消えている。
あれも不思議な経験だった。
自分でコントロールできない夢。
もうみることがなくなった落ちる夢。
経験をしていなくても思い出すことができる。
自分の想像の世界なのだろうか。
脳は不思議がつまっている。