いちごのつぶやき

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20Km離れた場所でのアルバイトで

学生時代のこと。

20Km離れたところへ家庭教師に行っていた。

それもバイクで。

もう雨の日は辛くて、辛くて。

バイクに降りかかる横殴りの雨。

でも、これを乗り越え、一時間半の勉強を共にして帰ってくれば4,000円のバイト代だ。

スーパーでお中元のバイトをするより4割増でいい。

だから、踏ん張る。

スーパーのお中元のバイトも拘束時間は長いが繁忙期に一気にシフトを組んでくれるのでもちろん感謝している。

学費のため、生活費のため、たくさんのバイトはやめない。

雨の日も、晴れの日も頑張るのだ。

でも、一番の目的は学生だが。

 

家庭教師だから、自分だけが頑張ってもどうにもならない。

担当している学生さんの成績が上がらなければ先生交代となる。

だから、少し遠いけど、雨の日も晴れの日も風の日も、自分の学校がないときはできるだけ踏ん張る。

一番辛かったのは、冬の夜の雨の日のバイトだ。

その日も20km離れたバイト先へ向かい18時に出発。

行きはよいよいだ。

鼻の下の感覚はなくなるものの、かっぱはどぼどぼになるものの、到着するやいなや暖かい部屋。

そして、やさしそうな中学生男子。

勉強を開始して20分から30分で運んでいただく温かい飲み物。

これで、体力と気力を復活させる。

雨のことも忘れそうになる快適さ。

 

どぼどぼに濡れて、へろへろに疲れた私をかわいがってくれていたのだろう。

今なら、よーくわかる。

そして、もう少しましな感じで到着できたはずだと考えることもできる。

しかし、その時は必死である。

雨なんてなんのそのくらいで行かないと、気持ちで負けてしまうのだ。

 

勉強も順調に進み1時間半後の夜8時に終了。

今日の進み具合の評価なんかをしながら、親御さんに挨拶。

もっと英語の成績を上げたいとか。。。

はい、スパルタでとはいかないもののなんとなくわかる。

英語は頑張れば、そう、頑張れば伸びるはず。

そんな話を聞きながら20分後には帰路へ。

立派なお屋敷をあとにする。

 

一気に夜の寒さがしみて、現実に引き戻される。

これはやばい、ウインドブレーカーもスキー用の手袋も突き刺す寒さ。

あの暖かい空間があれば、なんでもできるのでは?とか人の環境を羨みつつも

安全運転でバイクを走らせる。

冬の夜の雨って、つらいほど身にしみる。

これは冷たいだけではない、何かが神経をすり減らしている。

私はこれを学生時代3年間やっていた。

もちろん20Km以内の近場もたくさんあった。

だから、平均すればどうってことない。

しかし、何年経ってもあの遠かった移動の日々は蘇ってくる。

 

ある夜の雨の日。

夜の道路は工事が多い。

だから、いつもならすんなり行ける信号も3倍ほど待っても進まないことがある。

もう夜の9時近く。

だから、工事さえなければすっと進める道。

でも、大掛かりな道路工事。

工事用の明かりを煌々と照らして、アスファルトを剥がしている。

びっくりするぐらい下、掘り下げられた道の下に工事現場の方。

水道工事だろうか。

そうか、快適な生活はこうやって冬の夜の雨の中の工事とつながっている。

朝からきれいな水が出る水道はこういうことか。

あまりに長い待ち時間に工事用のライトをボォーと眺めながら、考えてみたりする。

そして、警備員の方の誘導灯が上がるのを待つ。

一向に上がらない誘導灯。

いつまで待たすのさ。

待ってるのは私一人。

だから、原付きバイク一台。

長い。。。こんなに長いなら自動販売機でジュースを買えばよかった。

そして、冷え切った手を温めたい。

そして、市内まで戻ったら、ちょうど飲み頃になったそのカフェオレを飲むのだ。

そんなことを考えながら待ちぼうける。

まだ、待っているのは私一人。

もう、雨が上がろうとしていた。

そして、雨が上がるなら、かっぱを脱ごう。

そして、、、そんなことを考えていると、工事現場の方が缶コーヒーをくれた。

ほへっ????

これってもらっていいの?

わたしは現場の人でもないけど、ちょうど休憩に入ったもよう。

そして、警備の方が長くなってスミマセンと誘導灯を上げた。

進んでよしの合図。

少し会釈しながら、いただいたコーヒーをかばんに入れて進みだす。

私の通ったタイミングが悪かったのか、車は迂回していたのか、やはり後続の車はいなかった。

そんなことがあって、気分よく家路を急いだ。

しかし、一時間半の移動は長い。

途中でいただいたコーヒーを飲み干し、ほくほくと帰宅。

次の週はバイトは休み。

だから再来週、あの工事現場を確認しよう。

きっときれいになっているのだろう。

道は埋め戻され、朝には何もなかったように生活が繰り広げられていく。

 

 その後、何度もその道を通った。

半年近く工事が続いていたようだ。

あるバイトの帰り道、またしても待たされることに。

もう半ば諦めて、ぼぉーっとしていると、「バイトですか?」とお兄さん。

「はい。」とか答えながら、工事のお兄さんの顔を拝見して、ビックリ!イケメンなのだ、イケメンすぎるというか、文句なしにかっこいい。

こんなタレントさんみたいなイケメンが話しかけてくれたぞ!!!!

一気に疲れが吹き飛んだ♪

 

そんなこんなで、長い道のりも、冬の夜道も楽しいものに変わっていった。

道中も楽しくなりつつあったバイトは、私の学生生活の終わりとともに、呆気なく終わった。

特にロマンスがあったわけでもなく、ただただイケメンの工事のお兄さんに会えるかもしれないバイトの道中。

月日が流れても、寒さ冷たさに必死で立ち向かっている自分の姿とイケメン兄さんだけが脳裏に残っている。