学生時代はビニール傘を使っていた。
ビニール傘でも骨のしっかりしたものだ。
しかし、やはりビニール傘は間違いやすいし、たくさん立てられている傘立てに入れるとなると躊躇する。
そこで、バイト代で傘を買いに行くことにした。
小さなデパートの傘コーナーであれこれ見てみる。
見てると広げていいですよとのこと。
そして、たくさん広げてみる。
青色で白のステッチのかわいい傘があった。
開き方もチューリップを逆さにしたように開く傘。
気に入ったので値段を確認。
6000円だった。
自分にとっては、高い。
なくしたときのことを考えた。
しかし、大事になくさないように使えばよいとも思った。
ビニール傘には悪いが、この傘の方が大事にするだろうと思った。
そして、青いチューリップ形の傘との付き合いが始まった。
おとなしい青色だけど、生地もよく、使い勝手も非常によかった。
小雨の時は折りたたみ傘を使い、大事にしていた。
ある大雨の日、緊張する飲み会があり、青色の傘を使った。
慣れない歓迎会とのことで、飲み会の終盤には疲れていた。
そして、恐れていたとおり、傘を忘れて返ってきてしまったのだ。
数日後に気づき、お店に電話をした。
忘れている傘はたくさんあるので見に来て下さいとのこと。
一人で行くのは不安だったので友達についてきてもらった。
おびただしい傘が店の前の傘立てにあった。
開店前の店なので誰もいない。
傘はこんなに忘れられているのかと思うとショックを受けた。
100本以上あるなかをくまなく見たが、自分の傘はなかった。
あのお気に入りの傘にはもう会えない。
忘れた傘はどこかにいってしまった。
落ち着いた青なので、間違ってしまわれたのかもしれない。
仕方ない、あきらめるしかない。
お礼を店に伝えて、友達ととぼとぼ帰った。
友達は違う傘にしなねっと優しく言ってくれた。
ありがとう。そういって別れた。
その後、ずっと傘は買わなかった。
親がくれたビニール傘をつぶれるまで使うことにした。
ビニール傘は骨がしっかりしているからか、それから4年間はつぶれなかった。
ある日、小雨の中ビニール傘を使った。
小さな傘立てに数本の傘。
なくなるのがイヤなので傘袋を使っていたが、そこは傘袋がなかった。
傘を持ち込めないところだったので、傘立てを利用した。
小一時間して、傘立てに戻ると傘はなくなっていた。
悲しくなった。
ビニール傘さようなら。
これで傘は折りたたみ傘以外なくなった。
その日は仕方なく雨に濡れて帰った。
当分の間、折りたたみ傘で雨をしのいだ。
そして、社会人になって梅雨にさしかかる頃に傘を買った。
もう高い傘は辞めて、前の傘の半額以下でさらりと買った。
傘立てはどうしてもの時以外利用しなくなった。
青色の傘のこと、骨のしっかりしたビニール傘のことも忘れつつ10年以上経った。
さらりと買った傘は健在である。
ニュースから傘は高級なものを一本購入し、大事にしましょうとの声が聞こえてくる。